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東京地方裁判所 昭和58年(ワ)6539号 判決 1984年7月13日

昭和五七年(ワ)第一四六七五号事件原告、

昭和五八年(ワ)第八三〇九号反訴事件被告

三宅ヨシロウ

昭和五七年(ワ)第一四六七五号事件原告

阿部敏夫

右両名訴訟代理人

高山俊吉

土田庄一

昭和五八年(ワ)第六五三九号事件原告

榎本功

右訴訟代理人

土田庄一

昭和五七年(ワ)第一四六七五号事件被告、

昭和五八年(ワ)第六五三九号事件被告、

昭和五八年(ワ)第八三〇九号反訴事件原告

グリーン開発株式会社

右代表者

吉田栄喜

主文

1  昭和五七年(ワ)第一四六七五号事件被告グリーン開発株式会社は、同事件原告三宅ヨシロウに対して金三九八万円、同事件原告阿部敏夫に対して金三一〇万円及びこれらの金員に対する昭和五七年二月一六日から支払ずみに至るまで年五分の割合による金員を支払え。

2  昭和五八年(ワ)第六五三九号事件被告グリーン開発株式会社は、同事件原告榎本功に対して金四〇万円及びこれに対する昭和五八年五月一日から支払ずみに至るまで年五分の割合による金員を支払え。

3  昭和五八年(ワ)第八三〇九号反訴事件原告グリーン開発株式会社の同事件被告三宅ヨシロウに対する反訴請求を棄却する。

4  訴訟費用は、各事件ともに昭和五七年(ワ)第一四六七五号事件及び昭和五八年(ワ)第六五三九号事件の被告で、昭和五八年(ワ)第八三〇九号反訴事件の原告であるグリーン開発株式会社の負担とする。

5  この判決は、主文第一項及び第二項に限り、仮に執行することができる。

事実

(当事者の略称について)

以下においては、昭和五七年(ワ)第一四六七五号事件原告、昭和五八年(ワ)第八三〇九号反訴事件被告の三宅ヨシロウを「原告三宅」と、昭和五七年(ワ)第一四六七五号事件原告の阿部敏夫を「原告阿部」と、昭和五八年(ワ)第六五三九号事件原告の榎本功を「原告榎本」と、昭和五七年(ワ)第一四六七五号事件被告、昭和五八年(ワ)第六五三九号事件被告、昭和五八年(ワ)第八三〇九号反訴事件原告のグリーン開発株式会社を「被告会社」という。

第一  当事者の求める裁判

(昭和五七年(ワ)第一四六七五号事件につき)

一  原告三宅及び原告阿部

主文第一項及び第四項と同旨の判決及び仮執行の宣言を求める。

二  被告会社

1 原告三宅及び原告阿部の請求を棄却する。

2 訴訟費用は原告三宅及び原告阿部の負担とする。

との判決を求める。

(昭和五八年(ワ)第六五三九号事件につき)

一  原告榎本

主文第二項及び第四項と同旨の判決及び仮執行の宣言を求める。

二  被告会社

1 原告榎本の請求を棄却する。

2 訴訟費用は原告榎本の負担とする。

との判決を求める。

(昭和五八年(ワ)第八三〇九号反訴事件につき)

一  被告会社(反訴原告)

1 原告三宅は、被告会社に対して、金二〇〇万円及びこれに対する昭和五六年一二月三一日から支払ずみに至るまで年五分の割合による金員を支払え。

2 反訴訴訟費用は原告三宅の負担とする。

との判決及び仮執行の宣言を求める。

二  原告三宅(反訴被告)

主文第三項及び第四項と同旨の判決を求める。

第二  当事者の主張

(昭和五七年(ワ)第一四六七五号事件)

一  請求の原因

1 被告会社は不動産の売買仲介等を目的とする株式会社である。

2 原告三宅及び同阿部は、昭和四四年三月二一日被告会社に入社し、昭和五六年七月二〇日退職した。

3 退職金請求について

(一) 被告会社の就業規則及び退職手当金規程によると、従業員が二年以上勤務して退職した場合には、退職時の給与の基本給の月額に、勤続年数(一年未満の端数は切捨て)から一年を控除した年数に対応する数を乗じた金額の退職手当金(以下「退職金」という。)を支払うこととされていた。

(二) 原告三宅は、退職時の基本給として一か月金一八万円、同阿部は、退職時の基本給として一か月金一〇万円の支給を受けていた。

(三) よつて、原告三宅は、右基本給の一一か月分の金一九八万円、原告阿部は、右基本給の一一か月分の金一一〇万円の退職金請求権を有する。

4 出資金払戻請求について

(一) 被告会社は、昭和四八年、そのいわゆる子会社として、宿泊施設、レストラン等の経営を目的としたリゾートインズ株式会社(以下「訴外会社」という。)を設立し、被告会社代表者の吉田栄喜がその代表者に就任した。

(二) 被告会社代表者吉田栄喜は、訴外会社の設立に際し、当時の被告会社の役員や従業員に訴外会社に対し出資をして株式の引受けをするよう求め、出資者に対し、出資者が被告会社を退職する際には、被告会社がその株式を出資金額で買い取る旨を約した。

(三) 原告三宅及び同阿部は、そのころ、被告会社代表者吉田栄喜の求めにより、各自金二〇〇万円を出資して、訴外会社の株式各四〇〇〇株を引き受けた。

(四) また、被告会社代表者吉田栄喜は、昭和五六年四月、原告三宅及び同阿部に対し、右出資金の払戻しを約束した。

(五) よつて、原告三宅及び同阿部は、前記(二)の約束又は(四)の約束に基づき、右出資金各二〇〇万円の返還請求をする権利を有する。

5 原告三宅及び同阿部は、被告会社に対して、昭和五七年二月一二日に到達した内容証明郵便により、右書面到達後三日以内に右の退職金及び出資金を返還することを求めた。

6 よつて、被告会社に対して、原告三宅は、退職金一九八万円及び出資金二〇〇万円合計金三九八万円、原告阿部は、退職金一一〇万円及び出資金二〇〇万円合計金三一〇万円並びにこれらの金員に対する昭和五七年二月一六日から支払ずみに至るまで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  被告会社の答弁

請求原因第1、2項の事実は認める。同第3項(一)、(二)の事実は認める。同(三)の事実は否認する。同第4項のうち、(一)及び(三)の事実は認めるが、その余の事実は否認する。同第5項の事実は認める。

三  被告会社の抗弁

1 原告三宅及び原告阿部に対する抗弁

(一) 被告会社と原告三宅及び原告阿部とは、昭和五六年四月二一日、右原告両名の退職による退職金の支払及び訴外会社の株式の買取りについて、次のような合意をした。

①原告両名及び訴外阿部正男は、昭和五六年七月二〇日までの間被告会社大宮出張所において営業を継続し、右三名が連帯して、被告会社に対し右期日までの間に、同年二月度分として計上の三井ホーム取次手数料三件の内一三〇万円を補充入金すること、三月度分一五〇〇万円を入金すること、四月度二〇〇〇万円、五月度五〇〇万円、六月度五〇〇万円、七月度五〇〇万円、一二月度二二八万七八〇〇円をそれぞれ補充入金すること。②原告両名及び訴外阿部正男は、残務の整理として、将来被告会社に不利益な事態を招くと予想される残務がある場合に、相互にこれを指摘し合い、同年七月二〇日までに整理を完了すること。③原告両名の退職金の支払については、原告三宅は金一九八万円、原告阿部は金一一〇万円とし、前記①が達成すると同時に支払うこと(①の達成とは、売買又は仲介取引が実効契約として確定することをいう。)。④訴外会社の株式を被告会社が原告両名から買い取るのは、原告両名及び訴外阿部正男が右株式買取りのための簿外資金を捻出し、かつ右②の残務整理を完了したときに行う。

(二) ところが、原告両名及び訴外阿部正男は、右の①及び②の義務を履行しない。よつて、被告会社は、退職金及び訴外会社の株式の買取金を支払う義務はない。

2 原告三宅に対する相殺の抗弁

(一) 原告両名及び訴外阿部正男は、近代都市計画株式会社を設立し、不動産業を営んだ。

(二) 近代都市計画株式会社は、昭和五六年一〇月三〇日、被告会社を売主、訴外大道芳之を買主とする埼玉県蓮田市大字南新宿字五反歩五五四番地、五五五番地内の田及び畑139.82平方メートルについての代金一一〇〇万円の売買契約の仲介をした。原告三宅は、この仲介につき、近代都市計画株式会社の担当者であつたが、同年一二月三〇日ころ買主である大道芳之から代金の一部として金七〇〇万円を受領したのにかかわらず、その内金五〇万円を近代都市計画株式会社の仲介手数料として控除し、その内金二五二万円を被告会社に交付したのみで、残額三九八万円は、原告三宅が本件で請求している退職金一九八万円及び出資金払戻請求権金二〇〇万円合計金三九八万円の弁済に充当するとして、被告会社へ交付せず、これを着服横領した。

(三) よつて、被告会社は、原告三宅に対して右の金三九八万円につき損害賠償請求権を有するので、原告三宅の訴訟代理人の在廷する本件第二回口頭弁論期日において、原告三宅の本訴請求債権と対等額で相殺する旨の意思表示をした。

3 原告阿部の退職金請求についての抗弁

原告阿部は在職中次のような不正行為により被告会社に損害を与えたが、これは懲戒解雇理由にも該当するものであつて、このような場合には退職金請求権は発生しない。

(一) 原告阿部は、昭和五三年二月二〇日、被告会社の担当者として、訴外根本静枝に対し、被告会社の業務用地を代金三〇〇万円で売り渡す旨の売買契約を締結した。しかし、右土地は顧客に売却することのできない業務用地であつたため、右売買契約が解除された。ところが、原告阿部は、被告会社から根本静枝に対し返還すべきものとして受領した右代金三〇〇万円を根本静枝に支払わなかつた。

(二) 原告阿部は、被告会社の担当者として、訴外大山一範こと大山智との間に、被告会社が経営するテニスクラブ場の宿泊施設を利用する権利(預託金制宿泊権。LKCと略称。)を二〇〇万円で売り渡し、その代金を受領したのにかかわらず、これを被告会社へ入金しなかつた。

(三) 原告阿部は、退職に際し、右(一)、(二)の事実についての残務処理をせず、退職後に右の事実が判明し、被告会社は損害を蒙つた。これらの事実は懲戒解雇の理由に該当するものであつて、退職金の請求権は発生しない場合に該当する。

四  抗弁に対する原告三宅及び同阿部の答弁

1 抗弁第1項について

(一) 原告三宅及び同阿部と被告会社とが、被告会社が抗弁第1項(一)で主張する合意が記載された書面(乙第二号証)を作成したことは認める。しかし、右書面作成の趣旨は次のとおりである。

原告両名は、昭和五六年四月ころ、被告会社に対し宅地建物取引業法に基づく建設省の聴聞手続が行われる旨の公示がされ、被告会社代表者も不動産部門の閉鎖もやむなしとの言明を行うなどの状況のもとで、早急に退職して再出発をするため、退職金の支払及び出資金の返還請求をしたところ、被告会社代表者から、退職時までに資金を捻出してほしいとの要望が出され、乙第二号証記載の内容の提案がされたので、原告両名は、右提案のうち退職金支払にかかる業務(被告会社の主張①)の達成は不可能であろうことは明らかであつたが、退職時まで営業に努力し、退職金の資金を作ることには異論がなかつたので、努力目標として右提案に応じた。

退職金の支払につき従業員の営業成績を条件にする合意は無効である。

更に、出資金の払戻しについて簿外資金の捻出を条件としているが、これも違法行為を条件とするもので無効である。

次に残務整理を条件とすることは違法とはいえないが、この条件の趣旨は不明確であつて、条件とはなりえない。

(二) 抗弁第1項(二)の主張は争う。

2 抗弁第2項について

抗弁第2項(一)の事実は認める。同(二)の事実のうち、近代都市計画株式会社が被告会社と大道芳之との間の被告会社主張のような売買契約の仲介をし、昭和四六年一二月三〇日ころ大道芳之から代金の一部として金七〇〇万円を受領したことその内金三九八万円を被告会社へ支払つていないことは認めるが、その余の事実は否認する。右三九八万円は近代都市計画株式会社の被告会社に対する預り金又は売買代金残額の未払分にすぎず、原告三宅個人が取得したものではない。

3 抗弁第3項について

(一) 抗弁第3項(一)の事実中原告阿部が被告会社のために被告会社主張の売買契約を締結したこと、その後右売買契約が解除されたことは認めるが、その余の事実は否認する。原告阿部は被告会社から根本静枝に返還すべきものとして金三〇〇万円を受領したことはない。

(二) 抗弁第3項(二)及び(三)の事実は否認する。

(昭和五八年(ワ)第六五三九号事件)

一  請求の原因

1 被告会社は不動産の売買仲介等を目的とする株式会社である。

2 原告榎本は、昭和五二年四月一日被告会社に入社し、昭和五七年一一月退職した。

3 被告会社の就業規則及び退職手当金規程によると、従業員が二年以上勤務して退職した場合には、退職時の給与の基本給の月額に勤続年数(一年未満の端数は切捨て)から一年を控除した数に対応する月数を乗じた金額の退職金を支払うこととされていた。

4 原告榎本の退職時の基本給は一〇万円であつた。

5 よつて、原告榎本は、被告会社に対して、退職金四〇万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である昭和五八年五月一日から支払ずみに至るまで年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  請求原因に対する被告会社の答弁及び抗弁

1 請求原因第1項から第4項までの事実は認める。

2(一) 被告会社の退職手当金規程第七条第三項には、「懲戒解雇に準ずる理由で退職する場合には、退職手当金を減額することができる。」との定めがある。

(二) 原告榎本は被告会社に在職中次のような就業規則に違反する行為があつた。

(1) 原告榎本は、昭和五四年二月一九日に、被告会社の担当者として、訴外蜷川久子との間に、栃木県那須郡那須町大字芦野字〓場一四七一の内山林九九平方メートルを被告会社が蜷川久子に金一五〇万円で売り渡す旨の売買契約を締結し、そのころ代金を受領した。ところが、原告榎本は、右売買契約にあたつて、顧客に対し宅地建物取引業法により買主に交付すべきものとされている物件説明書、地形図(実測図)を交付しなかつたため、蜷川久子から監督官庁に申出があり、監督官庁の指導により被告会社は蜷川久子との売買契約を合意解除し、代金一五〇万円に二〇万円を付加して、同年一〇月一六日に蜷川久子に支払つた。これにより、被告会社は金二〇万円の損害を受けた。

(2) 原告榎本は、被告会社の担当者として、被告会社が経営するテニスクラブ場の宿泊施設を利用する権利(預託金制宿泊権。LKCと略称。)を訴外大山一範こと大山智に代金二〇〇万円で販売し、その代金を受領しながら、これを被告会社に入金しない。

(3) 原告榎本は、昭和五七年二月二一日、被告会社が経営するテニスクラブの運営に関して不満を持つ訴外八崎正彦と共謀して、特定の顧客を集めて、被告会社に対する不満分子の結束を策謀した。

(三) 以上のような理由は懲戒解雇の理由となる。よつて、前記退職手当金規程第七条第三項にいう懲戒解雇に準ずる理由で退職する場合に該当するから、退職金を三〇万円減額し、一〇万円とするのが相当である。

三  抗弁に対する原告榎本の答弁

抗弁(二)(1)の事実中、原告が担当者として蜷川久子と売買契約のための業務を行つたことは認めるが、その余の事実は否認する。被告会社が蜷川久子に売却した物件は、被告会社の所有するグリーンウッドテニスランチの施設の一部であるが、被告会社代表者吉田栄喜は、蜷川久子に対して移転登記をしようとしなかつたため、蜷川久子が建設省に不服申立てをし、建設省の行政指導によつて、売買代金と損害金を同人に支払つたものであり、原告榎本に責任はない。

抗弁(二)(2)の事実中、原告榎本が大山一範にLKCの販売をしたことは認めるが、その余の事実は否認する。原告榎本は売買代金二〇〇万円を被告会社に入金ずみである。

抗弁(二)(3)の事実中、原告榎本が八崎正彦の主催する会合に出席したことは認めるが、その余の事実は否認する。すなわち、被告会社は昭和四九年ころより那須における別荘地のテニスコート、ホテル等の会員制クラブを建設し、預託金制宿泊権を販売してきた。ところが、近年その預託金の返還時期が到来し、顧客から返還請求がされたが、被告会社はこれを返還しようとしない。そこで、顧客から販売を担当した社員に対して苦情が申し立てられるようになつた。八崎正彦は原告榎本の担当した顧客であるが、原告榎本に対して返還しない理由の説明を求めてきたため、原告榎本は、八崎の求めに応じて集会に出席して、被告会社代表者吉田栄喜の代りに説明をしたものであつて、何ら非難される点はない。

(昭和五八年(ワ)第八三〇九号反訴事件)

一  反訴請求の原因

1 昭和五七年(ワ)第一四六七五号事件(以下この項において「本訴事件」という。)における「三被告会社の抗弁」の「2原告三宅に対する相殺の抗弁」欄の(二)に記載したとおり、原告三宅は、被告会社へ交付すべき売買代金三九八万円を、本訴事件で原告三宅が請求している退職金一九八万円及び出資金払戻請求権金二〇〇万円の弁済に充当するとして、被告会社へ交付せず着服した。

2 しかし、本訴事件において被告会社が主張したとおり、被告会社は原告三宅に対して金二〇〇万円の出資金払戻義務を負つていないから、原告三宅の行為は違法で許されず、不法行為となるとともに、原告三宅は法律上の原因なく、金二〇〇万円を利得したものである。

3 よつて、被告会社は、原告に対して、不法行為による損害賠償請求又は不当利得の返還請求として、右の金二〇〇万円及びこれに対する着服の翌日である昭和五六年一二月三一日から支払ずみに至るまで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  反訴請求の原因に対する原告三宅の答弁

本訴における「四抗弁に対する原告三宅及び同阿部の答弁」の「2抗弁第2項について」欄に記載のとおり、被告会社が反訴において支払を求めている金二〇〇万円を含む金三九八万円は近代都市計画株式会社の被告会社に対する預り金又は売買代金残額の未払分にすぎず、原告三宅が取得したものではない。

第三  証拠<省略>

理由

第一昭和五七年(ワ)第一四六七五号事件について

一原告三宅及び同阿部の退職金請求について

1  被告会社が不動産の売買仲介等を目的とする株式会社であること、原告三宅及び同阿部が昭和四四年三月二一日被告会社に入社し、昭和五六年七月二〇日退職したこと、被告会社の就業規則及び退職手当金規程によると、従業員が二年以上勤務して退職した場合には退職時の給与の基本給の月額に、勤続年数(一年未満の端数は切捨て)から一年を控除した数に対応する月数を乗じた金額の退職金を支払うこととされていたこと、退職時の基本給として、原告三宅は一か月金一八万円、同阿部は一か月金一〇万円の支給を受けていたことは、いずれも当事者間に争いがない。

そうすると、右の退職手当金規程による退職金の額は、原告三宅が金一九八万円、原告阿部が金一一〇万円となることは、計算上明らかである。

2  そこで、被告会社の抗弁について判断するが、被告会社は、まず、昭和五六年四月二一日の右原告両名と被告会社との間の合意に基づいて、退職金の支払のための条件が達成されていないから、被告会社には退職金の支払義務はないと主張する。

<証拠>を総合すれば、次の事実を認めることができ<る。>

被告会社は、昭和四一年に設立され、別荘地の開発と分譲販売や不動産の売買仲介を業とし、最盛期の昭和四八年ころには従業員が約五〇〇人にもなつたが、その後業績不振となつて規模を縮小し、昭和五六年始めころには従業員の数も二十数名となつた。同年二月には、建設省において被告会社に対し宅地建物取引業法六九条一項の規定に基づく聴聞が行われることとなり、被告会社の内部においては、聴聞の結果いかんによつては、宅地建物取引業を営むことができなくなるのではないかとの不安を持つ向きもあつた。このようなことから、被告会社代表者吉田栄喜は、被告会社の大宮出張所の従業員に新会社を設立させて、大宮出張所を分離独立させることを考え、阿部正男や原告両名らに被告会社を退職して新会社へ移ることをすすめた。阿部正男や原告両名らも被告会社の前途に不安を抱いていたこともあつて、吉田栄喜のすすめに従つて被告会社を退職することを決意した。ただ、阿部正男や原告両名らは、退職に際しての退職金の支払や訴外会社の株式の買取りについて吉田栄喜に確認したところ、吉田は被告会社には支払うべき金がないので、阿部正男や原告両名らが退職までの間に営業活動により退職金等に充てるべき資金を捻出した場合にはこれを支払う旨を約し、更に事務の引継ぎ、残務の整理等をも含めて書面を作成することを求めた。阿部正男及び原告両名は当初はそのような書面の作成に難色を示し、特に退職までの間に一定の営業成績を上げるとの条項については、事実上達成不可能であると考えたけれども、以前に被告会社を退職した幹部社員の場合にその退職金の支払や訴外会社の株式の買取りが難航したことを見聞していたので、退職金の支払義務や右株式の買取りの義務が確認されることは大きな意味があるとして、吉田栄喜の申出に応じることとして、同年四月二一日書面を作成した。これが乙第二号証である。右書面には、原告三宅、同阿部正男と被告会社代表者吉田栄喜とは、右原告両名及び阿部正男の退職に関し、昭和五六年四月二一日付けで合意書を作成したこと、この合意書には、右原告両名及び阿部正男の退職届が同日提出されたことを確認すること、これによる業務の終了について次のとおり実施することとすること、として、「業務の終了 現在大宮出張所で継続中の不動産売買、仲介業務については来る七月二〇日を以て終了する。この期日までに別紙大宮出張所成績報告書に基づく二月度計上三井ホーム(株)取次手数料三件合計一三〇万円の補充、三月度一五〇〇万円の確定、四月度二〇〇〇万円、五月度五〇〇万円、六月度五〇〇万円、七月度五〇〇万円、一二月度228.78万円の補充を乙(原告両名及び阿部正男)は達成する。」とされていること、退職金の支払について、原告両名及び阿部正男の退職金は、「が達成されると同時に現金にて乙等(原告両名及び阿部正男ら)に支払う。の達成とは従来の慣例に従い売買仲介取引が実効契約として確定した時点をいう。」との記載がある。もつとも、右書面作成の当初は原告両名及び阿部正男の退職の日は同年五月二一日とされており、従つての「業務の終了」の項の「六月度五〇〇万円」及び「七月度五〇〇万円」の部分は記載されておらず、後日原告両名及び阿部正男の退職日が同年七月二一日に変更された際に被告会社代表者吉田栄喜と原告両名及び阿部正男とが合意のうえ付加された。

以上認定の事実によると、原告両名の退職金の支払は原告両名及び阿部正男が昭和五六年四月二一日付合意書中のの項に記載された営業成績を達成することを条件としているものと認められる。

ところで、被告会社においては就業規則及び退職手当金規程に退職金支給の要件、退職金算定の根拠が定められており、退職金は賃金の性格を有するものと認められるから、退職金の支払についてはいわゆる全額払の原則の適用があるものということができる。従つて、このような退職金の支払を条件に係らしめることは、それが使用者の一方的意思に基づくときは全額払の原則に照らして許されないことはもちろんであるが、それが使用者と労働者との間の合意により行われるときは、賃金請求権の放棄の場合と同様に、その合意が労働者の自由な意思に基づくものであると認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するときに限りその効力を肯定することができるものと解するのが相当である(最高裁昭和四八年一月一九日第二小法廷判決・民集二七巻一号二七頁参照)。このような見地から、退職金の支払につき前記のような条件を付する旨の合意の効力が認められるか否かにつき考えると、退職金の支払には、原告三宅及び同阿部らが退職の日までに一定の営業成績を上げることが条件とされているのであつて、逆にいえばこの条件が達成されなければ退職金の支払を受けることができなくなるところ前記認定のように、右原告らは右条件の達成は事実上不可能であると考えていたのであり、右合意に従うかぎり退職金の支払を受けられなくなる危険性が極めて大きかつたということができる。しかし、右原告らが本来支払を受ける権利を有する退職金につきこのような危険を犯してまでこのような合意をしたことが合理的であると認めるに足りる事情は本件全証拠によつても認めることができず、右の合意は右原告らの自由な意思に基づくものであるとすることはできない。そうすると、退職金の支払に前記のような条件を付する合意はその効力を有しないこととなる。

よつて、この点について被告会社の抗弁は理由がない。

3  次に、被告会社の原告三宅に対する相殺の抗弁について検討する。

近代都市計画株式会社が被告会社と大道芳之との間の被告会社主張のような売買契約の仲介をし、昭和四六年一二月三〇日ころ大道芳之から代金の一部として金七〇〇万円を受領したが、その内金三九八万円を被告会社へ支払つていないことは、当事者間に争いがない。そして、<証拠>によれば、右売買契約の仲介に当たり原告三宅は近代都市計画株式会社の担当者であつたが、買主の大道芳之から受領した売買代金六五〇万円を被告会社へ交付するに際し、同原告の退職金一九八万円及び訴外会社の株式出資金返還金二〇〇万円合計金三九八万円の弁済に充当するとして右金員を控除した残金二五二万円のみを被告会社に交付したこと、しかし、右金員は原告三宅において右の金三九八万円の弁済に充当したものではなく、近代都市計画株式会社が自己の所持に係るものとして保管しているものであることが認められ、この認定に反する証拠はない。この認定事実によると、右の金三九八万円は近代都市計画株式会社の被告会社に対する未払金にすぎず、被告会社が原告三宅個人に対し支払請求権を有するものとはいえないから、相殺の抗弁は理由がない。

4  また、被告会社は原告阿部について、同原告は在職中不正行為により被告会社に損害を与えたが、これは懲戒解雇理由にも該当するので、退職金請求権は発生しないと主張する。

<証拠>によると、被告会社の退職手当金規程第七条第二項は「前項の退職手当金は、懲戒解雇の者には支給しない。」と規定し、同条第三項は、「懲戒解雇に準ずる理由で退職する場合には、退職手当金を減額することができる。」と規定していること、この他には、退職金の不支給又は減額を定めた規定は存在しないことが認められる。ところで、原告阿部が被告会社を退職したのは、同原告と被告会社との間の合意に基づくものであつて、懲戒解雇ではないことは前記認定のとおりであるから、退職手当金規程第七条第二項に該当しないことはいうまでもない。次に同条第三項に該当するか否かを考えてみると、同項にいう「懲戒解雇に準ずる理由で退職する場合」とは、懲戒解雇の理由があるけれども諸般の事情により懲戒解雇とはせずに合意による退職その他の形式による退職とされた場合又は懲戒解雇の理由までは存在しないがこれに近い理由があり、合意による退職その他の形式による退職とされた場合と解するのが相当であるが、この規定を適用して退職金を減額するためには、退職の当時においてそのような場合に該当することが使用者により明示又は少なくとも黙示的に明らかにされていることが必要であると解すべきである。けだし、このように解しないと、使用者が退職金の支払を免れるために労働者の退職後に懲戒解雇の理由に該当する事実を探し出してきてそれを理由に退職金の支払を拒絶することを認める結果となり、労働者の権利を著しく不安定にすることとなり、不当な結果となるからである。本件においては、原告阿部の退職の当時において退職金の不支給又は減額をすべき理由があるとして問題とされたことをうかがわせるに足りる証拠は存在しないから、退職手当金規程第七条第三項を適用することはできない。

よつて、この点について被告会社の抗弁も理由がない。

5  よつて、被告会社の抗弁はすべて理由がないから、被告会社は、原告三宅に対し金一九八万円、原告阿部に対し金一一〇万円の退職金及びこれらに対する支払請求書到達の日であることが争いのない昭和五七年二月一二日の後である同年二月一六日から支払ずみに至るまで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金の支払をすべき義務がある。

二原告三宅及び同阿部の出資金返還請求について

1  被告会社が昭和四八年そのいわゆる子会社として訴外会社を設立し、被告会社代表者の吉田栄喜がその代表者に就任したこと、原告三宅及び同阿部がそのころ被告会社代表者吉田栄喜の求めにより各自金二〇〇万円を出資して訴外会社の株式各四〇〇〇株を引き受けたこと、右原告両名が昭和五六年七月二〇日被告会社を退職したことは、当事者間に争いがない。

2  原告三宅及び同阿部は、被告会社代表者吉田栄喜は、訴外会社の設立に際し、出資者に対して出資者が被告会社を退職する際には被告会社がその株式を出資金額で買い取る旨を約したと主張する。

<証拠>を総合すると、次の事実を認めることができ<る。>

訴外会社は昭和四八年に設立されたが、同社は被告会社が所有するホテルの施設を維持管理することを業とすることを目的として、被告会社と事実上一体をなすものとして設立され、その設立に際し、被告会社代表者吉田栄喜は、被告会社の幹部職員に対し、訴外会社に出資してその株式を取得するよう勧め、被告会社を退職する際には、被告会社においてその株式を当初の出資金額により買い取る旨を約した。被告会社の幹部職員は、大部分が訴外会社に対して出資をし、その株式を取得した。このようにして訴外会社に出資した被告会社の幹部職員のうち、塚田勝俊、草刈昭次、石代強、川越昇、三浦正功及び岡崎昭夫は、昭和四九年から昭和五六年までの間に被告会社を退職したが、いずれも被告会社に訴外会社の株式をその出資金額で買い取つてもらつた。原告三宅及び同阿部が阿部正男と共に被告会社を退職するについて、昭和五六年四月被告会社代表者吉田栄喜と話合いをした際に、原告阿部らが訴外会社の株式の買取りを吉田栄喜に対し申し入れたところ、吉田栄喜は被告会社には資金の余裕がないので、原告三宅、同阿部及び阿部正男が被告会社を退職するまでに簿外資金を捻出することを条件に訴外会社の株式の買取りに応ずることを提案し、原告三宅、同阿部及び阿部正男もこれに応じ、その旨の書面(乙第二号証)を作成した。

以上の認定事実によれば、被告会社代表者吉田栄喜は、訴外会社設立のころ、被告会社の従業員で訴外会社に出資しその株式を引き受けた者に対し、被告会社を退職する際には、被告会社において訴外会社の株式をその出資金額により買い受け、代金を支払うことを約束したものと認められる。

そうであるとすれば、被告会社は、原告三宅及び同阿部に対して出資金各二〇〇万円を支払うべき義務があるものといわなければならない。

3  そこで、被告会社の抗弁について検討する。

被告会社は、まず、被告会社と原告三宅及び同阿部との間の昭和五六年四月二一日の合意に基づき、訴外会社の株式を被告会社が買い取るにつき、原告三宅、同阿部及び阿部正男が株式買取りのための簿外資金を捻出し、かつ、右原告両名及び阿部正男が残務の整理を完了することが条件とされていたと主張する。

<証拠>によると、原告三宅、同阿部及び阿部正男と被告会社代表者吉田栄喜とは、昭和五六年四月二一日、右原告両名及び阿部正男の退職について合意書を作成したこと、右合意書には、「残務の整理」として、「右原告両名及び阿部正男と被告会社代表者吉田栄喜の双方が担当者残務として将来にわたつて被告会社に対して不利益な事態を招くと予想される残務を相互に指摘し合いこれを書面にし、個別に双方の協力を以つてその整理を昭和五六年七月二〇日迄に完了する」との趣旨の記載があり、また、「株券の買戻し」として、「右原告両名、阿部正男及び三浦正功の保有する訴外会社の株券の買戻しは、過去に発生した田口三〇四万円を含め残五九六万円の帳簿外資金を右原告両名及び阿部正男が捻出し、かつ、前記の「残務の整理」を完了した時点で一括して現金にて支払う。」との趣旨の記載があることが認められ、この認定に反する証拠はない。右の記載によると、原告三宅及び同阿部に対する訴外会社の株式の買取りは、右原告両名らにおいて「帳簿外資金」を捻出すること及び「残務の整理」を完了することを条件としているものと認められる。しかし、ここにいう「帳簿外資金」の意味は必ずしも明確ではないが、仮にそれが被告会社の会計帳簿に記載しない資金を意味するとすれば、これを捻出することは違法行為であるから、そのような条件は無効である。そして、このような無効な条件が付された法律行為の効力について、法律行為全体が無効となるのか、条件のみが無効となるのか(無条件の法律行為となるのか)は、一つの問題ではあるが、本件においては、前記認定のように被告会社の訴外会社株式の買取義務は、昭和五六年四月二一日の合意の以前から存在していたのであり、右の合意により初めて発生したものではないから、条件のみが無効となるものと解するのが相当である。次に、「残務の整理の完了」を条件とすることは違法ではないが、その意味内容が不明確であつて、条件とすることは無意味なものといわなければならない。

よつて、被告会社のこの点についての抗弁は理由がない。

4 次に、被告会社の原告三宅に対する相殺の抗弁については、退職金請求についての一の3で判断したとおり、被告会社が原告三宅個人に対し金三九八万円の支払請求権を有するものとは認められないから、この点についての抗弁も理由がない。

5  よつて、被告会社の抗弁はすべて理由がないから、被告会社は、原告三宅及び同阿部に対し訴外会社の株式出資金の買取代金として各金二〇〇万円及びこれに対する支払請求書到達の日であることが争いのない昭和五七年二月一二日の後である同年二月一六日から支払ずみに至るまで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金の支払をすべき義務がある。

第二昭和五八年(ワ)第六五三九号事件について

一被告会社が不動産の売買仲介等を目的とする株式会社であること、原告榎本が昭和五二年四月一日被告会社に入社し、昭和五七年一一月退職したこと、被告会社の就業規則及び退職手当金規程によると、従業員が二年以上勤務して退職した場合には退職時の給与の基本給の月額に勤続年数(一年未満の端数は切捨て)から一年を控除した年数に対応する数を乗じた金額の退職金を支払うこととされていたこと、原告榎本の退職時の基本給は一か月金一〇万円であつたことは、いずれも当事者間に争いがない。

そうすると、原告榎本の退職手当金規程による退職金の額は、金四〇万円となることは、計算上明らかである。

二そこで、被告会社の抗弁について判断するが、被告会社は、原告榎本は懲戒解雇に準ずる理由で退職する場合に該当するから、退職手当金規程第七条第三項により退職金を減額するのが相当であると主張する。

被告会社の退職手当金規程第七条第三項は「懲戒解雇に準ずる理由で退職する場合には、退職手当金を減額することができる。」と規定していること、ここにいう「懲戒解雇に準ずる理由で退職する場合」とは、懲戒解雇の理由があるけれども諸般の事情により懲戒解雇とはせずに合意による退職その他の形式による退職とされた場合又は懲戒解雇の理由までは存在しないがこれに近い理由があり、合意による退職その他の形式による退職とされた場合と解するのが相当であるが、この規定を適用して退職金を減額するためには、退職の当時においてそのような場合に該当することが使用者により明示又は少なくとも黙示的に明らかにされていることが必要であると解すべきことは、第一の一の4で述べたとおりである。原告榎本本人尋問の結果によると、原告榎本は合意により退職したものと認めることができ、この認定に反する証拠はなく、その退職の当時において退職金の減額が問題とされたことをうかがわせるに足りる証拠は存在しないから、退職手当金規程第七条第三項を適用することはできない。

よつて、被告会社の抗弁は理由がない。

三そうすると、被告会社は、原告榎本に対して退職金として金四〇万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日であることが記録上明らかな昭和五八年五月一日から支払ずみに至るまで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金を支払うべき義務がある。

第三昭和五八年(ワ)第八三〇九号反訴事件について

被告会社は、原告三宅は被告会社へ交付すべき売買代金三九八万円を原告三宅の退職金一九八万円及び出資払戻請求権金二〇〇万円の弁済に充当するとして被告会社へ交付せず着服横領したところ、被告会社は原告三宅に対して金二〇〇万円の出資金払戻義務を負つていないとして、原告三宅に対して、右の金二〇〇万円の支払を求めている。しかし、第一の3において述べたとおり、右の金三九八万円は近代都市計画株式会社の被告会社に対する未払金にすぎず、被告会社が原告三宅個人に対し支払請求権を有するものとはいえないから、被告会社の反訴請求は理由がない。

第四むすび

よって、昭和五七年(ワ)第一四六七五号事件における原告三宅及び同阿部の被告会社に対する各請求並びに昭和五八年(ワ)第六五三九号事件における原告榎本の被告会社に対する請求は、いずれも理由があるから認容し、昭和五八年(ワ)第八三〇九号反訴事件における被告会社の原告三宅に対する反訴請求は、理由がないから棄却し、訴訟費用の負担につき民訴法八九条を、仮執行の宣言につき同法一九六条を、それぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(今井功)

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